指名手配犯・桐島聡を描く衝撃作 映画『「桐島です」』 完成披露舞台挨拶
伴明監督の過去作品に頭を丸めてエキストラ出演し、今回主演に抜擢された毎熊克哉、ドラマ「魔物(마물)」での熱演が話題の北香那らが登壇!
指名手配犯・桐島聡の、弱い立場の人に寄り添う人柄・考えをドラマチックに描く衝撃作『「桐島です」』の完成披露舞台挨拶が開催された。
2024年1月26日に、「ウチダヒロシ」という偽名を使って藤沢市内の土木関係の会社で住み込みで働いていたことが判明し、3日後に亡くなった指名手配犯・桐島聡氏。桐島は何を思い、どんな事件を起こし、その後、半世紀にわたって、どんな逃亡生活を送っていたのか。
冒頭、伴明監督は、「企画の小宮さんから、『この映画を撮らんといかんでしょ』と突きつけらました。以前連合赤軍の映画(『光の雨』)を作ったので、その流れで言われたというのがわかりました」、「いろんな事実を踏まえつつ、知らないことが多くて、その分自由でした」と本作の制作経緯を説明。製作総指揮の長尾は、「50年前、僕は高校生だったんです。この事件はぼやっとしか思っていなくて、何があったのか知りたいと思いました。そういう人が捕まらずにいることは知っていたので、それを伴明監督が描かれるということで、興味があった」と本作の製作に乗り出したきっかけを話した。


毎熊は、「実は16年くらい前に僕が『俳優をやってみよう』と、初めてプロの映画の現場に行ったのが、伴明さんの作品(『禅 ZEN』(2008))で、その時はエキストラで3日くらい参加していました」と告白。伴明監督は、毎熊がエキストラで出ていたことについて、「後で知りました」と話し、会場は笑いに包まれた。毎熊は、「演じる人によって桐島像がすごく変わってしまうので、現場で一度も監督と俳優としてやりとりをしたことがない俳優にこの役というのは不思議だなと思いながらも、恐怖半分、『行くか』という感じ半分でした」と自身の覚悟について語った。
ついに伴明組の主演オファーが来たことについて毎熊は、「高橋伴明監督が言ってくださっているというだけで『もうやります』という感じだったですけれど、桐島聡という謎に包まれた人物をやる、しかも、つい最近までこの世で同じ時間を生きていた人というのは、同時に怖いことだと思いながら、でも、高橋伴明監督作品で、しかも今回のような役をやるという魅力の方が勝ってしまって、(エキストラ出演から)十何年間頑張ったご褒美だと思って、難しいことは後から考えようと思って、『やらせてください』と言いました」と話した。
北はミュージシャンのキーナ役に関して、「実在しているか定かではないとはいえ、(実在の桐島氏が)女性の方に告白をされたという記事は見ていました。私がこのキーナという役を作るにあたって、実在していたか実際していなかったか自体はそこまで考えず、桐島の対極にいる女性というか、明るくて、夢に向かって、希望に満ちている女性でいたかったというのはありました。(桐島氏の)人間らしさなどに惹かれたのかなと思いながら、ヒントを毎熊さんのお芝居からもらいながら、役を作っていきました」と話した。キーナが桐島に惹かれた瞬間について、「(桐島が)どういう人間なのかがあまり見えないところがあったのですが、故意的ではなく、自然に笑いかけられた時に、掻き乱される感覚がありました」と毎熊の演技を具体例として挙げた。
原田は10代の頃からギタリストとして活動してきた。本作のケンタ役を演じるにあたり、「実際に桐島が通っていたバーがあったとは聞いていたので、クールなところではないんじゃないか、親しみやすいバーのマスターなんじゃないかと想像して、演じさせていただきました。桐島とキーナが初めて出会うシーンだったので、なるだけ掻き乱さないように注意してやりました」と裏の苦労を語った。


毎熊は20歳〜70歳までを一人で演じたが、特殊メイクはしなかったそう。伴明監督は、「(過去に)特殊メイクで2回くらい失敗しているんです。いわゆる普通のメイクの方が、自然に見えるというのを経験上解ったのと、今男性が若いんです。昔みたいにわかりやすく歳を取らない」と説明した。
北は、「(毎熊が)ピンピンの時しか知らないですけれど、作品を観た時にすごく自然で、特殊メイクじゃないと今知りました」と話し、毎熊は、「最初に監督から『特殊メイクは考えていないんだ』と聞いていたので、やる前は、『自分は70代、いけるかな』という心配はめちゃくちゃあったんですけれど、撮影時に鏡に映った自分を見て、『見えるな』と思って、何もしないでこのまま歩こうと思って、歩きました」とのこと。原田も「本当に老けてますよ」と太鼓判を押した。
最後に長尾が「桐島っていう奴がいたんだなという思いを馳せていただけたら幸せです」、原田は、「20歳〜70歳までの桐島の生き方の背景や(主にフィクションパートで)その周りに関わる人たちの人間模様がしっかり描かれているので、楽しんでください」と思いを語った。
北は「私はこの作品を観て、現代を生きている人間として、すごく思うところがたくさんありました。多分皆さんも自然とそういう気持ちになっていくと思うので、いろんな層の方に是非観ていただいて、自分のいろんな思いや想像を楽しんでいただけたら嬉しいなと思います」とのこと。
毎熊は、「この映画に関しては、僕のようにこの事件を全く知らなかったという人も観れる映画になっています。この映画に出ている桐島がなぜそんなに優しかったり、なぜそんなに怒っているのかがわからない可能性もあるんですけれど、青春映画を観に行くつもりで観に来ていただきたいと思います」とアピール。
最後に伴明監督は、「(桐島氏が)なんであの事件を起こしたのかということは、クエスチョンのままでいいと思うんです。それはわからないままに、こういう50年間の青春があったことをそれぞれが受け止めてもらえればいいと思います。それを納得してもらえたら、この桐島が浮かばれるのではないかと思っています」とメッセージを送った。
■イントロダクション
2024年1月26日、衝撃的なニュースが日本を駆け巡った。1970年代の連続企業爆破事件で指名手配中の「東アジア反日武装戦線」メンバー、桐島聡容疑者(70)とみられる人物が、末期の胃がんのため、神奈川県内の病院に入院していることが判明した。
男は数十年前から「ウチダヒロシ」と名乗り、神奈川県藤沢市内の土木関係の会社で住み込みで働いていた。入院時にもこの名前を使用していたが、健康保険証などの身分証は提示しておらず、男は「最期は本名で迎えたい」と語った。報道の3日後の29日に亡くなり、約半世紀にわたる逃亡生活に幕を下ろした。
桐島聡は、1975年4月19日に東京・銀座の「韓国産業経済研究所」ビルに爆弾を仕掛け、爆発させた事件に関与したとして、爆発物取締罰則違反の疑いで全国に指名手配されていた。最終的に被疑者死亡のため、不起訴処分となっている。
このナゾに満ちた桐島聡の軌跡を『夜明けまでバス停で』(22)で第96回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞、脚本賞を始め数々の映画賞を受賞した脚本家・梶原阿貴と高橋伴明監督のコンビがシナリオ化。医師の長尾和宏が、『痛くない死に方』『夜明けまでバス停で』に続き、高橋作品の製作総指揮を務める。
桐島は何を思い、どんな事件を起こし、その後、半世紀にわたって、どんな逃亡生活を送っていたのか。
主演の桐島聡役は毎熊克哉。主演映画『ケンとカズ』(16)で注目されて以来、映画・ドラマで活躍し続けている。本作では20代から70歳で亡くなるまでを演じ切っている。また、さそり部隊のメンバー宇賀神寿一役には『SR サイタマノラッパー』(09)、主演『心平、』(24)の奥野瑛太が起用された。奥野も20代から70代までの幅広い年代を見事に演じた。
さらに、ミュージシャンのキーナ役にはドラマ『バイプレイヤーズ』(17〜)のジャスミン役で脚光を浴び、『春画先生』(23)で新境地を見せた北香那。劇中では河島英五の名曲「時代おくれ」(86)のカバーを披露し、新たな演技の幅を見せている。謎の女役は高橋監督のパートナーで昭和を代表する女優、高橋惠子が演じる。本作のタイトルに触れた高橋惠子本人が、夫である伴明監督作品に初めて自ら出演を希望したという。
また、『さすらいのボンボンキャンディ』(22/サトウトシキ監督)で好演した原田喧太と影山祐子のコンビがバーの店主役と工務店の事務員役をそれぞれ務めた。さらに甲本雅裕、山中聡、白川和子、下元史朗、趙珉和といった高橋監督に縁の深いキャスト陣が脇を固め、映画を一層深みのあるものにしている。
【あらすじ】
1970年代、高度経済成長の裏で社会不安が渦巻く日本。大学生の桐島聡は反日武装戦線の活動に共鳴し、組織と行動を共にする。しかし、1974年、三菱重工爆破事件で多数の犠牲者を出したことで、深い葛藤に苛まれる。組織は警察当局の捜査によって、壊滅状態に。指名手配された桐島は偽名を使い逃亡、やがて工務店での住み込みの職を得る。ようやく手にした静かな生活の中で、ライブハウスで知り合った歌手キーナの歌「時代遅れ」に心を動かされ、相思相愛となるが…。
【クレジット】
毎熊克哉
奥野瑛太 北香那 原田喧太 山中聡 影山祐子 テイ龍進 嶺豪一 和田庵
伊藤佳範 宇乃徹 長村航希 海空 安藤瞳 咲耶
趙珉和 松本勝 秋庭賢二 佐藤寿保 ダーティ工藤
白川和子 下元史朗 甲本雅裕
高橋惠子
監督:高橋伴明 製作総指揮:長尾和宏
企画:小宮亜里 プロデューサー:高橋惠子、高橋伴明
脚本:梶原阿貴、高橋伴明 音楽:内田勘太郎 撮影監督:根岸憲一 照明:佐藤仁 録音:岩丸恒
美術:鈴木隆之 衣裳:笹倉三佳 ヘアメイク:佐藤泰子 制作担当:柳内孝一 編集:佐藤崇
VFXスーパーバイザー:立石勝 助監督:野本史生 ラインプロデューサー:植野亮
制作協力:ブロウアップ 配給:渋谷プロダクション
製作:北の丸プロダクション
2025年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/日本語/105min
©北の丸プロダクション
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